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人生は上々だ かつての『レッズ』に会いに行く 千島徹(Additional Time)

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2009年11月、千島徹から電話をもらった。
「ご無沙汰してます。今、大丈夫すか?実はご報告があって…」
彼から引退の決意を知らされた。たしか、愛媛FCの公式HP上で発表がなされる2日ほど前だったと記憶している。

最初に思ったのは、《せっかくケガが治ったのだから、もう少しプレーできるのでは》ということ。
いや、正確に言えば、もう少しプレーできるのではと思ったというよりも、《もう少しプレーしている千島君を見ていたい》という筆者の一方的な願望だった。

とはいえ、彼のセカンドキャリアでの夢も聞かされていたし、彼が愛媛にいる間、定点観測的に数回現地を訪れてリハビリしているところも見知っていた。
無理は言えないなと思った。
だから、「そっか…、残念だけど、お疲れさま」と伝えた。

彼と再会したのは、件の電話をもらって5ヶ月ほど経った頃だった。
彼の方から「ちょっと聞いてもらいたい話があるんですけど」との連絡があり、大宮駅の待ち合わせスポット『まめの木』のオブジェ前で落ち合い、南銀座へ向かった。
入った居酒屋で僕はビールを、千島はコーラを飲みながら、話をした。
内容は、セカンドキャリアについて。

当連載でも触れていた通り、当時のアパレル業界は素人の参入を簡単に許してくれるような状況ではなかった。
そして、「やっぱり、サッカーからまるっきり離れてしまうのも、嫌だなって気持ちがあるんですよね」との思いを聞かされた。

サッカーとアパレル業を天秤にかけるような質問をいくつか投げかけた末、感じたことは、千島の身体の中にはサッカーへの愛情が離れがたいものとして根付いているということだった。
だから、サッカー界でやれることがあるかどうか、まずはそれを探してみた方がいいのではと、助言らしきものを伝えた。
千島からは後日、指導という形でサッカーに関わる仕事を見つけることができたとの報告をもらい、ほっとしたことをよく覚えている。

その後は、年に1回ぐらいは顔を合わせる関係が続いていた。
ただし、引退のことについて、根堀り葉堀り聞くのは今回がはじめてだった。

僕自身は、千島に対して「ケガにさえ泣かされなければ…」という思いがずっとあった。
だが、本人の認識は少し違うようだ。
ケガはたしかに辛いことだったが、そのおかげで学べたこともあったと千島は言う。そして、それ以外の面では、良いこともたくさんあったプロ生活だったと彼は考えている。
レッズでは、小学生時代から憧れていた福田正博と同じ時間を過ごすことができた。福田から直接話を聞き、学んだこともたくさんあった。デビュー戦では、その福田と同じピッチに立ち戦うことができた。

愛媛でも、楽しいことはたくさんあったと彼は言う。
中でも彼が忘れられないのは、2006年8月、移籍して最初の関東遠征となった国立競技場での東京ヴェルディとの一戦。
この日、国立のアウェイ側ゴール裏には、愛媛のオレンジだけではなく、レッズの赤もあった。千島を応援しようと、浦和サポーターがレッズ時代のレプリカを身に着けて応援に駆けつけてくれたのだ。
「オレンジと赤が交ざったあの光景をウォーミングアップのときに見て、泣きそうになりました。本当に感動的な光景でした」
千島はそう語る。
それは、誰もが味わえるものではない特別な景色だった。
「A代表にも入ってないし、成功したとは言えないかもしれないけど、自分としてはプロでの10年間は充実した時間でした」
千島はそう振り返っていた。

千島は今を、充実していると言う。
その『第2のサッカー人生』が、これからも変わらず喜びに充ちたものであってほしいと思う。

(了)

なお、この原稿はメールマガジン第6号(2013年9月5日配信)から転載したものです。
他のコンテンツは

●大原ノートから 『新潟戦の意義、阿部勇樹のキャプテンシー』


●『世代交代 ― 79年組と調子乗り世代』(第2回)第1章『1979』

などです。


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テーマ:Jリーグ - ジャンル:スポーツ

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プロフィール

小齋秀樹

Author:小齋秀樹
1970年12月18日、宮城県生まれ。仙台第一高校→早稲田大学卒業。
サッカー選手のインタビュー、ノンフィクション執筆をメインに活動するJリーグ登録フリーランスライター。

著書は『goalへ―浦和レッズと小野伸二』(文藝春秋)、『敗戦記』(文藝春秋)。

サッカー専門誌や『web Sportiva』、『Sports Graphic Number』への寄稿のほか、浦和レッズのホームゲームで発行・販売される『オフィシャルマッチデープログラム(MDP)』にて『WARRIORS IN RED』を連載中。

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